長短金利操作付き量的・質的金融緩和のオバーシュートコミットメントの怖さ
9月21日の日銀金融政策決定会合で、日銀は新たな枠組みでの金融緩和を進める方針を示しました。
①イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、10年債金利を概ね0%程度で推移)
②オーバーシュート型コミットメント
が2つの新たな柱に思える。
これらは、別々の要因で困難が伴うと思われるが、今回は②について少し考えてみた。
オーバーシュート型コミットメントは、消費者物価指数上昇率が見通しではなく実績値が安定的に2%の物価目標を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する、フォワードガイダンスの強化である。
今までとの違いは2%の目標が「達する時期」に比べ、「実績値が安定的に超えるまで」と緩和の時間軸が伸び強力な緩和が続くというスタンスを示したことであろう。
これはマイナス面が大きいと個人的に思います。
物価2%が達成できていないのは、今までの「達する時期」のコミットメントが弱かったからではなく、日本の実力がそもそも物価2%に見合っていなかったらであり、コミットメントを強化しても「達する時期」に変化はないでしょ。
しかし、オーバーシュート型コミットメントになったことで、実力に見合わない2%が実際に達成した場合でも緩和が続くということは、物価の急上昇を招く危険性があります。特に日本は長年のデフレでインフレへの体質がなく、2%超の物価上昇は恐怖を招く可能性があります(2%を安定的に超えてくると逆に抑えるのは難しいかもしれない…)。
日本の財政赤字も過大である中、悪い物価上昇が人々のマインドを悪化させる。こう言った可能性を秘めたフォワードガイダンスだと感じています。
物価上昇率が2%に全く満たない現状では「達する時期」と「実績値が安定的に超えるまで」どちらでも一緒ですが、いざ2%に近づいてくると「実績値が安定的に超えるまで」のコミットメントは劇薬になる可能性があることを認識しておく必要があるかもしれません。
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